風邪気味のこころ
炭本 樹宏

 遠く離れた異国の風景のように
 今日の僕の住んでる街は趣を変えていた
 僕の心のレンズに映る街路樹は音もたてずに
 ささやきあっている
 夜になって街灯が灯ると目に見えない妖精が
 やはりささやきあっている
 昼間の喧騒からはじきだされて
 君と二人で木枯らし吹く街角から
 暖かい温もりのベッドへ身体を滑り込ませる
 何か起こる予感が枕の上に転がっていて
 僕一人眠りの国に入国できず
 口からのろしをあげて狂気の日々を消し去ろうと
 まぶたの裏に楽園を描く
 のどが渇いてしかたない
 睡眠薬を飲んでも次から次へと
 フラッシュバックする過去の過ち
 風邪気味のこころは明日がどちらに向かうのか分からず
 風見鶏がくるくる回るように僕は惑わされてるだけ

 あぁ 寒いの嫌や 寒いの嫌や

 人工の温もりではこころの風邪は治らない
 人肌恋しいこの季節
 再び君の眠るベッドへもぐり込もう

 北窓の僕の部屋に春が訪れるのはずっとずっと先になるだろう




自由詩 風邪気味のこころ Copyright 炭本 樹宏 2005-11-12 23:53:48
notebook Home 戻る