雨が好きなの
刑部憲暁

毎日 雨の七月は
すずしくなるのはともかくとして
どことなく 鬱々として
なんだか 人生の遠景みたいです 煙っていますし

そんな気もしてくるんですけれど でも七月だから
庭に道に花は咲き乱れ
アジサイの枯れたように穏やかな色合いや
柔らかなバラの表情 くちなしのコケットな香りとか
見たり嗅いだり 〔くちなしは見ちゃダメですけど〕
ああそれだって 好いこともあるよねって
思えるから ありがたいです

そういう時にまた 道端に
赤いシャープペンシル 落ちてたりするんですよね
雨に打たれて 踏んじゃいそうにもなって
取り上げて つん とノックして
お どうした ってきくと
寝てるの って 〔おいおい!〕

道端に寝てるのは 穏やかじゃないでしょ
ましてや 四・五日降り続いてた わけですから
おかしいでしょ それ
へんなの って言いましたら
雨が好きなの ですって 好い子なんだ
ぼくもさ って言ったら
にっこり 笑いました


自由詩 雨が好きなの Copyright 刑部憲暁 2005-11-12 22:08:14
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