ナダレ遊戯
カンチェルスキス





 曜日だけはおぼえている
 寒いから季節だけはようやくわかる
 閉じたままの傘が傘入れにちゃんと入ってる
 雨が降った日はいつのことか
 雨のせいで色が変わったジーンズの裾が
 まだここで濡れている
 全身が導火線のない火薬だった
 


 もしかすると言葉をしゃべれたかもしれない
 毛皮をひっはがすといくらか金になったかもしれない
 四つ足の動物たちが
 洞窟から湧き出た火砕流の渦に
 飛び込んでいく
 はずむ軌道を線で描いたら
 すべてがからまった
 それをずっと見てたら
 吐き気がしてきた




 窓のサッシで小さな蜘蛛が 
 歩いている


 ビニール袋に入った
 使用済みの単三電池を奥歯で
 噛み砕けという
 指令を忠実に守ってる
 捨て身の踊り場
 白いチョークで描いた円の中から
 出ないようにしている

 


 暮れた部屋の中で
 留守がちな家を訪ねるために乗った 
 電車の扉にもたれている
 裾が濡れて色が変わっている
 ジーンズをさわった
 雨が降ったのはいつだったか
 暇つぶしのクイズとしては難解だった






自由詩 ナダレ遊戯 Copyright カンチェルスキス 2005-11-09 18:59:16
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