さといも家族
服部 剛

親父は定年退職し
母ちゃん専業主婦となり
息子のぼくは半人前

母ちゃん家計簿とにらめっこ
ばあちゃんが払う食費も1万ふえて
なんとかやりくりの日々であります

雨もりがあふれる床
寝つきの悪い深夜には
そそくさとねずみが走る天井裏
「介護度5」の我が家は年老いて
大工さんにあちらこちらをとんかちで叩いてもらい
首を長くして待ちに待った給料は
おかずの少ない皿を洗い終えた流しのように
穴に泡ばかりを残して消えてゆきます

今晩のおかずはひときわ素朴でありまして
白いご飯のまわりには
「お買い得!」の赤字シールがラップに貼られた 
うす桃色の塩じゃけに
ねぎの輪切りが浮いた味噌汁に
中でももっとも素朴なものは

灰色の 小皿の上に 乗せられた
3っつのさといもの煮っ転がし

食卓の上の
天井から吊るされ
色褪せた傘の内に光るらんぷに照らされた
いくつものさといも達はてかっており
じっとみつめると
だ円の丸みに小さい目鼻が浮かんできます

小皿の上から おおきいぼくを見上げて
「ぼくらをたべて!」とにっこり言うので
箸でつまんで口に入れれば・・・

ほっくりねっちり
口の中でかまれてつぶれたさといもの味はひろがり
自然と ほほが ほころびます

家族4人で食卓囲み
今日の出来事を語らいつつも
4人の口の中で身を崩すさといもが喜んで
ぼくの口の中を少々くすぐるようです

4人の顔はそれぞれの大きさで
灰色のだ円の丸みになってきます

進路のことで親父とケンカしてとっくみあい
おかずをひっくり返した夜もあったが
今夜はらんぷの下で食卓囲み
味をかみしめたさといもが胃袋に入れば
お金持でなくとも
ほっくり笑顔を絶やさずに
ねっちりしぶとく生きていけそうな
4人は丸みをおびた顔をてからせた
さといも家族
   
  
  * 自家版詩集「明け方のあお」(01年)より  



自由詩 さといも家族 Copyright 服部 剛 2005-11-05 17:27:03
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