THE WORLD IS WIDE
F (from send-ence)

君が今日は晴れているというので半袖で出かけてみたら
激しい雨で視界はおよそ2.5m
同じ空を見ているが
同じ景色は見ていない
そういうことだ

たかが浴槽を満たす体積すら所有していない僕という人間が電車に乗ってうたた寝している時に
誰かは鴨川で大切な人とくだらない事を話していて
誰かは地球の平和を守るため自己満足的にパトロールしていて
誰かは僕をいとも簡単に感動させてしまうような曲を思いついてテンション上がっていて
誰かは一人で人生ゲームをしてみたりしていて
誰かは
誰か

全てを把握する努力を惜しんだ僕はちっぽけな存在だと定義する
逆説的に世の中は広いと言えてしまって少し安心した

さぁ大きな声で
「この世は果てしなく広大だぁぁぁぁ!」

勢い勇んでもう少し大きな人間になってみてやろうと思ったが
大きくなりすぎて3分間しか自己主張できないウルトラマンになってしまっては困るので止めた

広大なこの世の平和を守るために必要十分な活動中のウルトラマンに
50mという身長を考えると違和感のない大きさの足に
恰幅の良さと海をも飲み込む心の広さを持った富田君(仮名)が
いとも簡単に踏み潰されてしまったことが何かしら僕の心的外傷になっている可能性は否定できない


なぁ富田、俺からなんかパクっていかへんかった?
そうでなきゃお前のことなんかもう忘れてるはずやねん


温かいコーヒーを口に含む
富田君が好きだった割合で入れたコーヒーは砂糖が少し足りない

君が今夜は星が綺麗というのでベランダに出てみたら
いつもと同じ星空が広がっていた
同じ空を見ているが
同じ景色は見ていない
そういうことだ

僕の声が電波に乗って君に届くまでに少なからずタイムラグが生じていることにも納得しよう


自由詩 THE WORLD IS WIDE Copyright F (from send-ence) 2005-11-01 00:19:26
notebook Home