輪郭線のために
ブルース瀬戸内

老人は考えています。

自分はルールの結晶なのだと

老人は考えています。


老人は考えています。

自分は自分のルールの結晶なのだと

老人は考えています。


何十年も生きると

余りにも多くのものに接して

いつしか自分でルールを作って

何かを守ろうとします。

その何かこそが自分であって

ルールこそが自分の輪郭線を描いて

自分が何者か教えてくれるのだと

老人は考えています。


ルールの中に閉じ込められるほど

自分の輪郭線がよりクリアになるのは

ひどく皮肉な気もすると

老人は考えています。

生まれた時はきっと
何の先入観もなく自由であったのに

その自由は、自分の輪郭線のために
不自由へと突き進んでいくのだろう、
人はそうせずにはいられないのだろうと

老人は考えています。



老人が考えている横で

その幼い孫が

ミニカーを食べようとしています。


自由詩 輪郭線のために Copyright ブルース瀬戸内 2005-10-28 00:01:07
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