ついさっき
トラック

母親が三回 部屋にやってきた

一回目は 猫の話 

二回目は 姉を駅に送ってくれないかと

三回目は この前会った 若い視覚障害者の女の子の事

点字で本が出したいと言うので 話を聞く

駅は人で溢れ 目の前の女の子が ふいに立ち止まったので一歩遅れて立ち止まる

動きで推測する 数秒間 

ゆっくりとその女の子の前に出れば 声をかけてくるだろう

思ったとおりのタイミングで声をかけられる

切符を一緒に買って お礼の言葉に何を返そうか

一言 気をつけていってらっしゃい と言ってみた

改札には 人が泡立ち 雑音は一つの形を作っている

パジャマのままで 駅に向かおうか

どっちみち 駅に向かうのか

カーテンの外には猫の寝息

駅に行けばいい 



自由詩 ついさっき Copyright トラック 2005-10-26 12:10:42
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