小石
アンテ


とぷん

小石が水面をたたく音は
日ごとに高く
遠ざかっていく
あんなに彼方で
気泡がきらきら揺れている
自分が沈んでいるのだろうか
こんなに暗い
水かさが増しているのだろうか
こんなに静かだ
ようやく
小石が落ちてくる

大きく振りかぶって
力いっぱい投げ返しても
いつの頃からだろう
小石は水面にすら届かなくなった
放物線を描いて
落ちてくるたび
肩が壊れるまで
何度も投げつづけて
そのたび
あたりの草や花が傷つき
枯れていった

小石を望んだのは
わたし
確かにわたし

枯れた草花のかわりに
小石を植えてみる
水も光もないので
うずくまって温める
見上げると
遠い彼方の薄明かりが
すこしずつ
深まって
不意に
ぷつ

途絶えた

なにも落ちていない
なんて惨めな思い
二度とくり返したくない
なにかが落ちている
なんて後悔
背負いたくない
だから
手を伸ばしたって
ろくなことがない
小石なんて
ない方が

とぷん

呼ばれた気がして
そっと身体を起こす
地面がほんのりと光っている
掘り起こすと
小石は澄んだ光を放っている
放すと
ふわりと浮かんで
あたりを照らし出す
振り仰ぐ
小石がひとつ
落ちてきて

とぷん
またひとつ
遠い
けれど確かに

何度も
何度も



自由詩 小石 Copyright アンテ 2004-01-09 01:21:40
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