雪葬
蒸発王


真っ白な雪野原での事でした



真っ白いその空気の中
インクを垂らしたように
その黒い人は立っていました


時折はためく

やはり

黒いマフラーが
降る雪と交差してまだらに映りました



その人は一人であったのです



確かに
一人であったのです




けれども


抱きしめられていたのです




その人は
抱きしめられている様に見えたのです



頭を垂らした細い首は
力なく吐く白い吐息は
しな垂れた2つの腕は
小さく見える背中は



確かに抱きしめられていたのです





身にまとう黒は



喪服




雪葬の場を
私は
見たのでしょう





自由詩 雪葬 Copyright 蒸発王 2005-10-20 23:18:44
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