泥沼夜
眠離

電気を消した夜の部屋を
久しぶりに歩いて みるまで
暗がりでは物が見えないことを
忘れていた

この部屋の暗さと
そう大差ない暗さをのせた屋上では
今頃
お線香が燃え終わろうとしている

モザイクのように
曖昧な破片を集めて完成しても
結局全体は曖昧なままでしかなかった
だから 自分もその一つで
わたしはこの暗い泥に 難なく埋もれる

そし て
また静かな表面を作った夜は
棺桶のような
瓶の底の、お線香を 優しく撫で
僅かに開いた隙間から流れ込み、
溢れ出し、私の喉と脳をいっぱいに浸して、渇かない



自由詩 泥沼夜 Copyright 眠離 2005-10-18 22:46:45
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