過去の届く午後
望月 ゆき

インターホンが壊れてしまって
不在票ばかり、溜まってゆく
ドアをノックする手を
誰も持たない


再配達を
今日は頼んだから、
夕暮れにつづく時刻に
言い訳を抱えて
ドアの内側に寄りかかってすわる
ほんとうは 誰かが
ノックしてくれるのを待ってる


届いたダンボール箱には
枝豆によく似た過去が入っていて
まだとりたての匂いで
枝にぶら下がっている
それを一つ一つ
ハサミでちょん切っては
泣いた


今日も
ドアはノックされなかった
枝から切り落とされた過去は
ところどころ
虫に食われていて
もう、食べることすら出来ない




自由詩 過去の届く午後 Copyright 望月 ゆき 2005-10-17 00:29:59
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