北原白秋の短歌
ふるる

言わずと知れた日本が誇る言葉の芸術家、あめんぼ赤いな北原白秋です。
からまつにからまつのかぜ。北原白秋です。

短歌の音とリズムの組み合わせが最高です。
というわけで、白秋の短歌を勝手にベタ褒めしていきたいと思います。ドンドンパフ〜


○「春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外(と)の面(も)の草に日の入る夕」

音も、リズムも、やさしげでいいですね〜。
さっすが「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん♪」の人。
リズムと音を自在に操っています。

「春の鳥よ、鳴くなよ鳴くなよう〜(TT)」という情けない訴えもいいですね。



○「きりはたりはたりちやうちやう血の色の棺衣(かけぎ)織るとよ悲しき機(はた)よ」

機って機織の機械かと思ったら、機織虫(コオロギ)のことだって。
「きりはたりちやう」は謡曲で機織やコオロギの声をあらわすのだって。

「きり」「はたり」「ちやうちやう」がいいですねー。リズムもいいですが、非常に悲しい感じの音です。
ソプラノ・テナー・アルトを各種とりそろえた感じでもあります。
それで「血の色」ですからね。文句ナシでしょう。



○「君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとく降れ」

すごく有名な歌らしいですね。「さくさく」が爽やかでいいですねー。
雪を踏む時の音と、林檎を齧る時の音って似てるもん。ナイス白秋の耳。
しかも、この「君」不倫のお相手で、女性は浮気してる夫のところに帰らないといけないんです。
そんな彼女に「雪よ林檎の香のごとく降れ」ですから!
素敵〜!!ジェントルマーン!!
(白秋は不倫の罪で投獄された後、晴れてこの女性と結婚したのに、離婚しちゃってますが)



○「油壺しんととろりとして深ししんととろりと底から光り」

キターーーーーーーー!!!
うわーーーーとろりとしてるーーーふーかーいーーーしずかーーーー!!!(うるさいな)
白秋代表作の一首と言われているらしいので・・・・解説はナシです。



○「夏、夏、夏、露西亜(ロシア)ざかひの黄の蕊(しべ)の花じゃがいもの大ぶりの雨」

夏が3つに「の」が5つ。この軽快なリズム。さらに濁音が続くので、
雨がすごそうだけど楽しそうな感じです。

「夏夏夏ココナツ〜♪」(古)の歌はここから来たのかも!



○「ガソリン・コールター・材香(きが)・沈丁と感じ来て春繁しもよ暗夜(やみよ)行くなり」

白秋は五十三歳の頃糖尿病で目を患ったのですが、だんだん光を失っていく中でも己の芸術を極める
ことを怠りませんでした。これは匂いを辿って春を感じている歌です。

「ガソリン」と始まり「沈丁」に来る。
飛び跳ねることができないリズム、無機質なカタカナ、切られた木の匂い、強烈な花の匂い。
音・リズム・言葉だけでなく、匂いまで。何かすさまじいものを感じます。

白秋は五十八歳で糖尿病と腎臓病が悪化し、永眠します。
言葉の魔王とさえ言われた、日本の財産となる歌を数多く作った人を、
早くに失ってしまったと思わずにはおれません。パフ・・・・




参考文献

「日本の詩歌 別巻 日本歌唱集」中央公論社
「日本の詩歌9 北原白秋」中央公論社
「短歌の技法 韻律・リズム」来嶋 靖生 著 飯塚書店
「短歌の技法 オノマトペ」飯塚書店編集部編 飯塚書店








散文(批評随筆小説等) 北原白秋の短歌 Copyright ふるる 2005-10-16 00:47:04
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