ことはじめ
The Boys On The Rock

大型台風が 故郷を直撃した夜
携帯電話で
十年以上も音信不通の父の処遇について
妹と話をした

その話の途中
突然の昏倒で緊急入院した母親を持つ恋人から
メールがはいった

その日 携帯電話の着信履歴はすべて会社からだった
たぶん ダウンしたサーバの復旧処置について

おそらく 今度も
「コト」をやり過ごせるだろう
根拠の無い 無意識の自信
でも いつか
「コト」をやり過ごせない事態を
避けられない ことは 重々承知の上

モノイワヌハハラフクルルワサナリ

嗚咽も絶叫も
深く嚥下すると 耳の奥で
鈍重な鉱物質の砕ける音

「コト」はいつはじまるか?
「コト」をいつはじめるのか?
文法上の"コト"の位置で 心のスタンスが揺れる

この状況においても
泣き虫の頬に涙は流れない

ふと 額を
涼やかな風が触れたような気配
ひょっとして天使の翼がかすめたのか
などと青臭い感傷を
スポンジのようなパンと同じく
水で喉に流し込んで

いまは
暴力的な硬質の雨粒に
この仏頂面を晒そう と
思った


自由詩 ことはじめ Copyright The Boys On The Rock 2005-10-15 15:23:06
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