カジモドの猫
まどろむ海月


細やかな雨が
降り続いて
冷えきった体を
温かな
獣の匂いのする
優しさで包んでくれる

 エスメラルダ
 と名づけられた猫は
 カジモドに抱かれて眠る

人間は総じて醜いのに
彼の美しさが
わからない

猫に生まれかわって
初めて見える 美

この自由
誇り
悦び

誰からも求められない
彼の愛
でも だから
私はその愛を
占有していられる

猫に転生して
初めてかなえられた
この願い

人であった日々にも
花陰の蝶の中に
安らいでいた日々にも
帰りたいとは
思わない

名前も
思い出さない

時間は
安らかに
閉じられた











   註 *カジモドはノートルダムの異様に醜い鐘突き男。                     *エスメラルダは、カジモドがひそかに恋するジプシーの美女


自由詩 カジモドの猫 Copyright まどろむ海月 2005-10-12 14:03:41
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猫たちの肖像画