赤頭巾
鏡文字

赤頭巾 お前の指は 
技巧にはしりやすい

あの人々は棘だらけの岩の間で
すっかり虚ろだ
勇敢ささえ捨ててしまった
願いましては
彼らにふさわしいドキュメントを
彼らの目にミラクルを
そうしてほんのちょっぴりの
エヴィデンスを
血にまみれていようと
お涙頂戴だろうと
結末なんて二の次さ!

赤頭巾 お前の奥歯に挟まった
肉をせせって吐き出してこい
ニガヨモギを噛みな、と
お前のばあさんなら言うだろう

ああ どこもかしこも生臭い
あたり一面血の匂い
虚ろな足取りの男達が
私を盗み見ている
まあ、と言って
赤頭巾はにやにやしました
あの人たち
私が怖いに違いない
おいで けだものたち
ボンボンをやるよ

(失われたものはなんだったのか
 ばあさんはボンボンを腹に詰め込みながら考える
 凛々しい若者と
 ブナの森
 いいや、そんなものははじめっからなかったさ
 説明したってこの子には
 分かるはずもなかろうね)

みんなPAUSE
古い写真のようにこちらを見たまま
踊るように腕を伸ばして
指だけが生きて動いている
やがてそこから根が生えて
虚ろな男達が
森になり 棺になり 彩られた地を
覆い隠すだろう

私そろそろ失礼するわ
ここは寒いし
あんたのおしゃべりは冗長よ
言っても言わなくても結局おんなじこと
私の指を見てごらん
こんなになって ひどいったら!










自由詩 赤頭巾 Copyright 鏡文字 2005-10-11 10:32:25
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