井戸
あおば

            
なにもないところから
水を汲み出す作業は
大変きついことです

今日も草臥れたあたまと
身体で
井戸の縁から
底を覗き込んで
あまりの深さに
ため息をついてしまった

白く光る丸い空に
すべてが収斂してしまって
ものうげに
水面が揺れ動いているのが見える

空中にあるものが落ちて
みずにしばらく浮いて漂う
軽いゴミみたいな
粉みたいなものが
その位置をかろうじて維持している



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作1979年5月17日


自由詩 井戸 Copyright あおば 2005-10-10 22:45:17
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