腕ひらき 微笑む
木立 悟





遅い月に
空は揺れ
鳥は眠り
朝の川を夢みる
冷たい光の下の水
海にもなる
人にもなる



雨の明かりをすぎる鳥
灰の轍をひたす水
幾度めかの浅い冬を
埋めてゆく仮の生のはばたき
雪に呼ばれたものの手のひら
雪を手わたすものの手のひら



夜から夜への舞が語らう
ひとつになりふたつになり
言葉を差し延べる
紡がれる火を 夜を
こぼれ落ちる矢を 花を
光を 迷いを 行方をなぞる
失われた清い名前のような
吹雪の流れのなかの月








自由詩 腕ひらき 微笑む Copyright 木立 悟 2005-10-10 13:43:20
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