スパーク
蝶番 灯

あなたが いなくなって

わたしは あなたの前から いなくなって

そうしたら 世界が変わった

気紛れな空の色も

壁を滑ってく光の色も

枯れ朽ちた紫陽花の色も

そう ひと粒ひと粒の酸素の色も

わたしだけの わたししか見えない色になった


独りきりに成ったばかりの

寂しい心が見せた夢は

わたしをどんどん孤独で真っ暗な世界に追い詰めて

幸せも 悲しみも 必然も 偶然も

素直に受け入れられない人間にしていった


運命を蹴飛ばして

信用を殴り殺して

誰も愛せないわたしを

知らずに恋する人だっていたけど

それさえも理解出来ない儘…


何時からこんなに理屈っぽくなってしまったの

今を生きるわたしを あなたが見つけたら

あなたは わたしを怒るのかな

遠い遠い場所でも あなたの心臓は息衝いている

言わなくてもそんな気がするよ

陳腐していくわたしを

あなたは見ている

そんな気がするよ





暗闇に衝突する豪雨の群れ

北の空を切り裂く轟音と

わたしを嘲笑う 高温の閃光

夢想を愛した瞳に 壱つの境目を生む





雨上がりの 目覚めかけた街角で

忙しく移ろう人々を

黙って見守る冷たいコンクリートジャングル

止まっていながら光速で動いているのさ

そして何時も 何時までも

消えたり輝いたりするわたしの夢を

今 一瞬見届けた筈だ

恐らくこれからも駆っていく


変わらない様に見える太陽は確かに老いていくけど

わたしが死ぬまでは照らしてくれるから


それだけでも 信じられたら生きていける


自由詩 スパーク Copyright 蝶番 灯 2005-10-10 12:35:45
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