カレーハウス
松本 涼


君は気がついた?
今 横断歩道の向こうを右に曲がった風に

何一つ決められない僕たちの前で
颯爽と行先を変えたんだ


でもきっと 君は気がつかなかったかもしれない


君はそのとき僕の反対側にある
カレーハウスのやたらと派手な看板を
じいっと見つめていたのだから



今日はやけに雲が多いね
だからと言ってそれが
僕らになんの影響もないのだけれど


山手通りってなんだかクールじゃない?
誰もが見知らぬ他人のように知らん顔でさ
もちろん他人なんだけどさ


あのスーパーは最近夜中の3時までやってるんだよ
そんな時間に客は来るのかな?
それより真夜中にレジ係りも大変だよね


この坂の上のマンションでさ
この間殺人事件があったの知ってる?
そのマンションの隣の会社に知り合いが働いてるんだ



なんて

どうでもいいことだね


多分僕はただあのとき
君がカレーハウスの看板を
見つめていたことが
とても哀しかったんだ





自由詩 カレーハウス Copyright 松本 涼 2005-10-08 17:37:03
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