わたり
たりぽん(大理 奔)

吹かれるように手を振る
ススキの群れの中に
枯れて埋もれていきたいと
いや、そんな最期のために
生きていきたいのです


西風が波を走らせて
遠泳の息継ぎのように
水面みなもがあえいで
見知らぬ水草が
不安そうに
足許に打ち寄せてきます

膝を抱えて
遠くにある鉄塔のてっぺんあたりが
ちらちらするのを
ながめているのですが
明滅するあれは
巣をかけようとする
猛禽かも知れません

その自由な鳥のかたちが
鉄塔から梢へと
誰かのメールのように
羽ばたきもせずに
渡っていくものですから
つい足許に寄せる
水草のことなど忘れて
ゆっくりうごめく雲の
妙に明るい切れ目に
目を奪われていました

そうしたら
瞬く間に飛ぶかたちは
梢から
ごうと風の影になって
ススキを揺らし

また
私を置き去りにして
いってしまうのです




自由詩 わたり Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-10-04 23:52:36
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