午後のむすめ
木立 悟




雨の日の花
川のなかに泣く
さくら色の虹
白と黒の道


遠去かる銀を畏れ
目をつむる距離をのばしてゆく
道はどこまでも速く
道はどこまでも高い


見えない炎のかたちを知ろうと
ひとつはひとつに触れていき
燃え上がり 焼け落ち
ふたたびみたび よみがえる


光を散らした跡の残る
荒れた午後の暗がりに
白と緑と黄に点る窓
明かりの楔をにじませている


きれいな水に
生まれながらの傷が浮かび
むすめは二本の指でなぞり
やわらかくゆるりと微笑んでいる


たとえ異なる地を歩んでも
ともに野をゆくしるしだから
月や星や遠い声に
見せてあげてもかまわないのだから


大きな大きな珠を抱きしめ
じっと目を閉じ聴いている
在ること以外なにもない
静けさの静けさを聴いている


なにが浮かび
なにが沈む
誰のものでもないむすめのため
小さな小さないのちたちのため


風が荒れている
窓の向こうで
うす曇りの水色の
風が荒れている


滴が目の深くに落ちて
他の滴たちと遊ぶとき
見聞きしたことを語りあい
水の道をめぐるとき


小さな空と大きな地が
陽と星をうたいつづけて
なかば閉じかけた目の色に
傷の色を重ねあわせる








自由詩 午後のむすめ Copyright 木立 悟 2005-10-01 12:56:55
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