散歩道
加藤泰清
煙突から煙 が似合う夜更けに
マフラーが棚引くと息が詰まる
三水に魚 の意味を模索する内
私の顔が魚に近づいてきている
ような感覚を 例えば鰓がある
息詰まるマフラーに愛着が涌く
そう感じるようになった
例えば鱗がある 鰭がある
煙突から の煙が泳ぐ魚に見え
魚は泳ぐ為に生まれてきた と
言わんばかりの煙 彼は戦いだ
魚に三水 が見当たらなかった
からだろうか
例えば悲鳴が 泪が
鱗の一粒一粒が剥がれ落ちて
彼は戦いだ 泳ぎ去っていった
その方角が明るくなるに連れて
煙突も 煙も 一昔前の流行り
だったような胸騒ぎに襲われる
朝のマフラーは私の鰓に 絡み
鰓は息苦しそうに痙攣している
マフラーの奥で蹲る 水を欲し
三水でなければいいと
鰓がある鱗がある鰭がある
魚眼の映す風景がある
思った 私は棚引くマフラーを
引き連れる 煙突の煙と一定の
歩幅で