心に住む人

あいつは 背伸びするのが実にうまいんだ
さりげなく それでいて 確実に
頭一つ分抜き出る

なかなか努力の芽が出ないからって
そこらのメガネ君が真似してはいけない
目立ちすぎて白い目で見られるか
バランス取れずにすっ転ぶか
まぁそんなところだ
あれはあいつにしかできない芸当なんだ

思えばあいつの演技力は
昔っから天才的なものがあった
特に芸術的なのが
どんな状況でも
例え不意を付かれたって
決して崩れることのない笑顔の作り方

それだけじゃない
俺なんかのことは忘れたかのように
いつでも演じ続けられる 忌々しい忍耐力ってのも
あいつは持ち合わせていた

家に帰った時ぐらい
疲れてベッドで泣いてたりすれば
ちょっとは可愛げもあるのに
嫌気が差す気配も無く
無表情で顔文字使ってメール打ってる

あぁ あいつがあんなだから
俺はいつまでたっても
外に出ていけないんだ
半年に一回ぐらい
ドアのロックがはじけ飛ぶ
それがチャンスなんだが
あいつはいつも鬼の力で
無理矢理押さえつけてくる
勝てそうにも無い


いいかげんに
俺の存在を認めて
ドアを開けてくれないかな
別に毎日じゃなくていいんだ
やってられなくなった時だけでいい
その時は俺が変わりに
好き放題暴れてやる

ってクサいセリフ吐いてみても
あいつは知らん顔で
俺を心の奥へ奥へ
押しやり続ける
心の奥へ奥へ
表に出さないために


あぁ
退屈だ

暴れたいな

暴れたいよ


自由詩 心に住む人 Copyright  2005-09-26 15:51:48
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