アメ
アンテ


タイセツなヒト
が死んでしまった
ケムリはまっすぐに
ソラにのぼっていった
タイセツなヒトを想うたび
頭のなかで
スイッチが入った
かち
音がして
タイセツなヒトで
キモチがいっぱいになった
タイセツなヒトにつながる
モノだけが
すべてだった
そんなふうに
切り離してしまうと
楽になれた

丘のうえで
ゆっくりと回りつづける
観覧車
右手でぜんまいを巻いて
左手で切符をさしだす
人恋しい
というのだそうだ
ゴンドラはゆっくりと上がっていく
地上が遠ざかっていく
窓から見える街は
とても遠い
手を伸ばしても
届かない

アメのひは
うれしかった
散り散りになってしまった
タイセツなヒトのカケラが
アメといっしょに落ちてくるような
気がして
街じゅうを
やみくもに歩きながら
いろんなアノヒトを想った
いろんなアノヒトと
いっしょにいる
いろんなジブンを想った
アメよ降れ
願うくせ
カサのそとには出られなかった
カサのさきから落ちるシズク
ばかり見ていた

一生ぶんの砂がつまった
砂時計
さらさら さら
終わったら
またひっくり返せばいいじゃない
だれかが言う
なーんにも知らないんだね
だれかが笑う
窓辺に肘をついて
風の音を聞いていると
自分が入れ物になった気持ちになる
さらさら さら
落ちていく
逆立ちをすれば
気分が晴れるかもね
だれも
返事をしてくれない

タトエバナシ
を見つけるのはカンタンだった
しょせんヒトは
生まれて
死んでいくものだから
多かれ少なかれ
出逢って
別れて
またヒトリになるものだから
手当たり次第
なにかをつなぎ合わせるだけで
ジブンのようなもの
ができあがった
それはわたしのかわりに
泣いたり
ハラをたてたりした
わたしのかわりに
タイセツなヒトを想ったりした

長いあいだ
記憶をため込みつづけた
言葉の群れ
ノートのうえに
インターネットに
まき散らされた感情
状況が
手招きをしてくれる
時には身代わりになってくれる
現実に追われて
言葉から離れて暮らしていると
なんだか
自由に思えて
自分が別人に思えて
うらやましい
うらやましいと
言葉が言う

ヘヤのオオソウジをした
徹底的に片づけた
ひと息ついて
オチャを飲もうと思ったけれど
お気に入りのカップが見つからなかった
まあいいや
ホンの続きを読もうとしたけれど
どこにも見つからなくて
朝届いたはずのテガミも行方不明で
まあいいや
とりあえずカイモノに出かけよう
したくをしていると
鏡に写ったジブンは
なんだかベツジンみたいだった
ゲンカンでふり返ってみると
どこか別のバショに思えて
でも
どこか懐かしかった
外はアメが降っていて
どれだけ探しても
やっぱりカサは見あたらなくて
ぼんやりと
軒先でアメを眺めた
それから
思い切って駆けだした




自由詩 アメ Copyright アンテ 2005-09-24 06:02:21
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
びーだま