4分39秒
カンチェルスキス







 液体枯渇の脳に注射器を射す
 崖に落ちてく列車の窓に映った
 黒く変形した俺たちの姿


 微塵も穢れなき青空の雷鳴を
 恐れ
 物陰で怯える
 地面に現れた無数の手に
 足をつかまれ
 やがて
 動けなくなって


 生まれる前から
 ひと通り蹂躙されていた
 免疫不全
 仮説としては家畜
 屠殺されたらいいのに
 食されることを望めない
 生き延びる家畜
 

 俺たちは何でもない
 屠殺されたらいいのに
 

 もともと俺たちは何であったのか
 狂おしい思いは声にはならない
 行き場所も帰る場所も見当たらない 
 

 針を抜いた注射器の中身は
 変わらぬままの空気
 崖に落ちてく列車の窓に映った
 黒く変形した俺たちの姿






  


自由詩 4分39秒 Copyright カンチェルスキス 2005-09-21 17:10:27
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