東南の精霊
鏡文字

   1

東南の守り神
ルーとバーベインそしてべトニーよ
あの小さく可憐な私の兎を
どうぞ邪な力から
お守りください
恐ろしい行為や忌まわしい意思から
どうぞ私の兎を
お守りください
桃色の神よ
黄色の神よ
藤色の神よ
私の時間をこんなにも
捧げたのですから
どうか悪魔が
私の兎に指一本触れられぬ様に
離れることなく
ついていてやって下さいまし

   2

東南の魔女
ルーとバーベインそしてベトニー
彼女らの仕事は
この家の「小さく可憐な」兎を
守ること
何故って先週
女主人に願掛けされたのだ
もちろん魔女達は
全く気が進まない
不平たらたら 文句ぶつぶつ
片腕を上げるのも億劫なのに
あの悪魔憑きの兎を守れとは!
女主人は気が利くが
あの兎は乱暴だ
手のつけられない怒りん坊
竜神ででもあるかの様さ
お遊びに夢中になっては
私達を手ひどく傷つけ
知らんぷり
いやあれは盲なのだ
本当に気付いちゃいないんだ
でなけりゃああの不正確な無鉄砲さは
説明がつかぬ
何より魔女等の合言葉は
「ありがとうの一言もなしさ!」

でも実のところ
兎はもちろん盲なんかじゃない
魔女達の仕事や不平など
すっかり承知の上で
王女のように
無垢に 鷹揚に
時折は謁見してやったりもする
笑ってやろうじゃないか
女主人を!
彼女には
あのしょぼくれた怠け者の婆さん連中が
美しい姿の守り神に
見えるそうだよ!


自由詩 東南の精霊 Copyright 鏡文字 2005-09-20 15:29:09
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