当たり前に死んでいくだろう
カンチェルスキス
炎天下の国道で生まれた俺は本能的に四つ足で生きる
燃える街路樹は火力を増して
国道を走る車の後部座席を焼き払う
揺らぐアスファルトの先で生まれた幻影を打ち破る視力を
太陽の黒点を見据える視力を俺は手に入れたいのだ
機械じみた空気の言いなりになった俺たちの背骨が
求めるものは縦の位置からはじまる外科手術だった
過呼吸で繰り返されるぶざまな失態
工場から直送された俺たちが
国道や街にあふれて共食いをはじめている
酸素が無いと誰かが言うのを俺は聞いた
俺たちが笑えるのは劣った自分に対してではなく
自分よりも少し劣ってると思える人間たちのことだけだった
延々と続くなだらかな国道の行く末に狂い始めて
似たような顔たちが側溝の狭間で呼吸停止していく
無の連なり束ねて生命する 無の連なり束ねて生命する
無の連なり束ねて生命する!
後部座席焼き払われ方向感覚を失った無軌道の車たちが
道の先 女性の陰部のように蠢く幻影に
何もかも吸い込まれていく死の葬列だ
炎天下の国道で生まれた俺は本能的に四つ足で生きる
燃える街路樹の炎が燃える
凝視の黒点 照らされる全生涯