当たり前に死んでいくだろう
カンチェルスキス






 炎天下の国道で生まれた俺は本能的に四つ足で生きる
 燃える街路樹は火力を増して
 国道を走る車の後部座席を焼き払う
 揺らぐアスファルトの先で生まれた幻影を打ち破る視力を
 太陽の黒点を見据える視力を俺は手に入れたいのだ
 機械じみた空気の言いなりになった俺たちの背骨が
 求めるものは縦の位置からはじまる外科手術だった
 過呼吸で繰り返されるぶざまな失態 
 工場から直送された俺たちが
 国道や街にあふれて共食いをはじめている
 酸素が無いと誰かが言うのを俺は聞いた
 俺たちが笑えるのは劣った自分に対してではなく
 自分よりも少し劣ってると思える人間たちのことだけだった



 延々と続くなだらかな国道の行く末に狂い始めて
 似たような顔たちが側溝の狭間で呼吸停止していく
 無の連なり束ねて生命する 無の連なり束ねて生命する
 無の連なり束ねて生命する!



 後部座席焼き払われ方向感覚を失った無軌道の車たちが
 道の先 女性の陰部のように蠢く幻影に 
 何もかも吸い込まれていく死の葬列だ



 炎天下の国道で生まれた俺は本能的に四つ足で生きる
 燃える街路樹の炎が燃える
 凝視の黒点 照らされる全生涯
 







自由詩 当たり前に死んでいくだろう Copyright カンチェルスキス 2005-09-14 14:50:00
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