次元の狭間で
士狼(銀)

絵は語りかけてくるのだ

院展に飾られた数十の世界に
僕は招かれ
彼等を渡り歩いた

ある明け方に
青い国は一筋の紅い光を浴び
鵜飼いの男は焚火を消した

ある朝に
インドの女が微風に微笑むと
神風少年の夢は途絶えた

ある昼食に
モデルの女が裸体で男と向き合い
猫は三匹で丸く寝子ネコになった

ある夕方に
青紫の木で蝶が妖精に孵化すると
風花が散る中で少女は泣いた

ある夜に
富士の麓で鯉が華麗に舞い
雪山でニ羽の鷹が翼を広げ空に吠えた

絵は語りかけ
自らの腹に僕等を導く


ある橙で
僕は間違えようもなく生きていたのだが
同じように三次と二次の間で死んでいた
どう足掻いても透けない狭間で
僕は揺れていたのだ


自由詩 次元の狭間で Copyright 士狼(銀) 2005-09-11 16:55:53
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