次元の狭間で
士狼(銀)
絵は語りかけてくるのだ
院展に飾られた数十の世界に
僕は招かれ
彼等を渡り歩いた
ある明け方に
青い国は一筋の紅い光を浴び
鵜飼いの男は焚火を消した
ある朝に
インドの女が微風に微笑むと
神風少年の夢は途絶えた
ある昼食に
モデルの女が裸体で男と向き合い
猫は三匹で丸く寝子になった
ある夕方に
青紫の木で蝶が妖精に孵化すると
風花が散る中で少女は泣いた
ある夜に
富士の麓で鯉が華麗に舞い
雪山でニ羽の鷹が翼を広げ空に吠えた
絵は語りかけ
自らの腹に僕等を導く
ある橙で
僕は間違えようもなく生きていたのだが
同じように三次と二次の間で死んでいた
どう足掻いても透けない狭間で
僕は揺れていたのだ