ミドリ
大覚アキラ
突っ走って
踏んづけちゃった
ミドリの影
滑って
身体ぜんぶ
足の先から
頭のてっぺんまで
ミドリになっちゃって
それでも
突っ走りつづける
ミドリの身体
薄暗がりの木陰から
思い出みたいに
忍び寄って
背中から
グサリ
逃げ去り
どっさり
でてくる宿便
ミドリの宿便
身体にやさしい効き目
意味なんか
ない
意味なんか
ないんだよ
身体にやさしいかどうか
それだけが
モンダイだ
そうだろ
ミドリ
会いたいよ
ミドリ
おまえに
身体にやさしいミドリが
おれの身体を
やさしく愛撫する
腹部
マッサージ
十五分間
どっさり
でてくる宿便
いやだ
もう宿便はいいよ
その話がしたいなら
帰ってくれ
ミドリ
おまえは身体にやさしい
みんなの身体にやさしい
こんな商売してるとね
身体の
輪郭が
アイマイになっていく
そんなカンジがするの
そういっていたミドリ
こんな商売っていうのは
身体を売る仕事で
他人の身体に
やさしくする仕事で
そういうことを続けると
身体の
輪郭が
アイマイになっていく
のだと
ミドリはいう
正確には
ミドリの主治医が
言っていたらしい
でも
ミドリは
突っ走って
踏んづけちゃって
滑って
身体ぜんぶ
足の先から
頭のてっぺんまで
ミドリになっちゃった
あの日から
それでも
突っ走りつづける
しかなかったワケで
たまに
宿便をどっさり
出したりしながら
そうやって
なにもかもが
アイマイなまま
突っ走っている
もっともっと
アイマイになって
すべてが
アイマイになる
その時まで