雨が強くなってきたからといって雨の日の詩は書かない.doc
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最近建ったばかりのマンションとマンションの間の
僕の生まれるずっと前から建っていた瓦屋根の上に
大きくて眩し過ぎる白い太陽が昇っているある日だ

その日は朝から風が涼しくてインドア派の僕の白い
白い肌を焦がしてやろうと陽射しを浴びせる太陽と
実に良いあんばいで過ごしやすいそんな一日だった

昼間から自転車で街の中を走っていると大小凸凹の
マンション・アパート・一軒家が立ち並びその全てが
窓を締め切っているのを見た僕はこんな日くらいは
機械の吐き出す空気じゃない風に当たれば良いのに
なぞとインドア派らしからぬ考えを頭の中に巡らす

だんだん日も沈んでいき蜜柑色の空の方へ僕は帰る
仕事の終わったオジサン達が駅へ走って向かう様を
逆方向へ進む僕は眺めながらオジサン達は家が好き
と忘れないよう沈んでいく太陽に10回くらい呟いた

もう少しで家という所で唐突に蜜柑色の空が光った
気がしたのだが僕はそれよりゴロゴロと鳴り続ける
腹の虫をどうにかおとなしくさせようとそのことに
一生懸命になってたのでそれほど気にならなかった

 そして頭から爪先までびしょびしょに濡れて帰った
 息子ジャックをお母さんはもうしょうがない子ねと
 呟いて奥から大きなバスタオルを持ってきて小さな
 小さなジャックを包み全身を拭いてあげるのだった
 外に置いた自転車は錆付き遅くても今月中には絶対
 買い換えなければいけない様子で雫に打たれていた

雨が強くなってきたからといって雨の日の詩は書かない
それがジャックのポリシーであった


自由詩 雨が強くなってきたからといって雨の日の詩は書かない.doc Copyright K+A 2005-09-04 23:54:39
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