誰もいない箱庭
たりぽん(大理 奔)

 風景だけが投げ出され
 約束だけが投げ出され
 虫の音だけが湿っぽく
 すごした風景を箱庭に
 閉じ込める


もう春、 桜は見ない
もう影、 五月雨を待たない
もう夜、 日光の鏡を見ない


 誰もいない城跡の箱庭
 白い絹で激しく包み
 君の投げ出した言霊の符で
 鎮守の森に奥深く
 君は幻ではなかった


一度だって君の瞳を
  星や月とは謳わなかった
一度だって君の唇を
  花や風とは謳わなかった 



箱庭には
誰も訪れない
秋も訪れない
訪れないことが
証明する真実を

許されない
永遠を



そう
君も僕も居ない




自由詩  誰もいない箱庭 Copyright たりぽん(大理 奔) 2005-09-01 23:24:03
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