アポロチョコ、青い月、雫する朝、筒の声。

「人間て、恋する機械なのね」って指でアポロを割る君の声

親指と人差し指についている二色のチョコは既に乾いた

表面のぎざぎざが消え無秩序になってしまったアポロに「ごめんね」

四文字のあとに固まる唇の中に無理矢理アポロねじ込み

桃色じゃない色のチョコの味だけを感じてしまうと泣く君の声

正論を言い聞かせても泣く君は一生アポロを割り続ける君

あまりにも淡い温度の君の髪梳かして、そっと唇寄せる

白かったタオルについたチョコの色に瞬きしつつくわえるアポロ

舌の上に混じり合う色感じてる君のまつ毛が揺れる角度は

閉じられた君の瞼に這わす指「あす、朝六時にアポロ、買おうか」

硬質の音と一緒に入り込むひかり、かざした手の色は赤

嘘色の白色光がかすみゆく。月は共存してはいけない。

アスファルト道路に浮かぶ酷薄な影が誰かの足に届いた

一睡もしてない明かりの目の前でするりと滑る手のひらと指

「まだアポロ買ってないのに」声溶かす唇なんて塗料で隠せ

「必要のない器官などいくらでも隠す手段はあるのですから。」

額から滑りゆくのは朝色の空から落ちてきていた雫

“ここにいま立ち尽くしてれば滑りゆく雫で水がたまってゆくの”

水面にうつって揺れる葉が君の腕に似ていた「水面を壊せ」

水面に世界が浮かぶことなんて関係なくて、膝折り曲げて、

折り曲げた膝小僧には白色の絆創膏の跡がついてる

不眠症患う空気を抱きしめる地面に落ちた飴玉の波

その辺の床に落ちてる飴玉の包み紙さえ剥がせない、朝

喉元をむき出しにして歩くんだ 液体に似た青い月見て

あの歌の言葉信じてくるぶしに水たまりの液、撥ね散らかして

襟元を濡らす雫は栄養度パーセンテージで二百を超えた

栄養のよくないものがいとしくて君のからだの液体が欲しい

「柔らかな体はたぶんゆるやかな温度を保つ器なんだよ。」

君のその鎖骨で泳いでいる魚 水音がいま、心音になる

「人間は、滴る機械なんだ」って、指でアポロを割る僕の声


短歌 アポロチョコ、青い月、雫する朝、筒の声。 Copyright  2005-08-31 03:54:16
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