タマゴちゃん
黒田康之

タマゴちゃんはちょーかわいい
僕は迷わずにゴマ粒でタマゴちゃんの顔を描いた
茹でたてのタマゴを丁寧にむいて
でもタマゴちゃんの目はもっともっと大きいし
いつもニコニコしていたんだよ

タマゴちゃんに初めて逢ったのは
星組のころ
最初からニコニコして
タマゴちゃんのことはすぐ好きになった
いっしょに砂遊びもしたし
ジャングルジムにも登った

それからしばらくして
大きなくるみの木のかげで
僕とタマゴちゃんはチュウをしたんだ
それでもタマゴちゃんは
笑ってくれて
そしたら
タマゴちゃんはほっぺにもチュウしてくれた

バスの中で
いつもとなりどうしで
僕のママも
タマゴちゃんのママも
ニコニコしていた

いつも手をつないで
とても柔らかな手をつないで
僕はタマゴちゃんと
いつも一緒だった

僕は今こうしてタマゴちゃんの顔を描いているけど
僕はもう大人になった
お酒も飲むし恋だってした
タマゴちゃんだって
きっと今ではどこかの街で
ニコニコのママになっているのだろう
たくさんのうれしいことの後で
いくつかの悲しさや悔しさや
あきらめやせつなさを知ってしまった今でも

もう僕はタマゴちゃんの本名すらも忘れてしまった
彼女の顔が
むかしむかしのタマゴ雛にそっくりだったことだけが
こうして
僕のそばにあって
彼女ではない女性のそばで
寝返りを打つこの子を見て
僕の中に今もタマゴちゃんは住んでいるのだ
何も飾り気のない愛そのままの
小さな家から
出窓に小さな細いあごを乗せて
ため息をつきながら海を見ている

タマゴちゃん
君の顔を描いた僕は
今こうしてここにいます


自由詩 タマゴちゃん Copyright 黒田康之 2005-08-31 00:42:29
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