ラピスラズリ
はな 



彼女は
朝の遠いこのまちの 
ちいさな刷毛で色をさしてゆく、群青
そらをぬりこくって笑う
その背中に 
にじんでゆく夕焼け空を想起しました
けれどもうぜんぶ しずんでしまったから



よるのあけてゆくおとは
さかみちを果実のころがりおちるのににていて
とりかえしはつかない、と
はのうらにそっとかたつむりをかくしたよるを
てのひらでくりかえします
ぐんじょう、
あなたはだれなのですか
たんじゅんな日々のきょくせんを
いくどもなぞるゆびが焼ける
あなたがかえってこないまま 
くりかえされてゆくゆうやけ



あなたがそっとよりかかって来て
僕はだまって すきまにうまれた心臓をさがした
ゆびが少しだけ震える
いつからか僕たちは
ずっとおなじ電車に乗っているね
揺れのなかでくずれてゆく 、
あなたを抱きしめるのがほんとうは怖かった 群青

だれもいないまちのすみの
あおく
しずむ交差点で
ふたりのかげはぬりつぶされていった 
あおく





*




澄んだみずうみの水面に
はくちょうのかたちのひとがおよいでいた
よく化けたね と
僕はわらった
そのひとも わらった

目を眩ませたそのひとは ぶかっこうに両手をひろげ
ひどく小さい
なつかしいなまえの
僕を呼んだ






自由詩 ラピスラズリ Copyright はな  2005-08-29 00:45:42
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