ひとつ足りない
ベンジャミン

今日が終わる
その少し手前で

ひとつ足りないことに気づく

いつものように
君を送りとどけた駅で

「またね」でもなく
「さよなら」でもなく
「ありがとう」でもない

ひとつ足りない
言葉が言えないことに気づく

それを思うと
いつも悲しくなってしまうのだけど

そうやって

ひとつ足りない
言葉が何なのかを考えているうちに
次の約束の日が来てしまうから

いつまでたっても
やっぱり

ひとつ足りないまま

今日も
君の後姿を見送りながら

ひとつ足りない
その言葉のことを考える

ひとつ足りない
たったひとつなのにと思いながら

ひとつ足りない
それだけのことに

胸がいっぱいになってしまう
    


自由詩 ひとつ足りない Copyright ベンジャミン 2005-08-24 22:45:59
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