『飛行少年、S、の聖夜 1996』
川村 透

第九、を
歌おう
裏声も雪のかたさにかすれ
鈴の音も惑う聖夜に
深く沈む想いと「僕」と二人きり
肩を並べて雪にとけて

それから
それから

大人達のむずかしい話にあいづちを打てなくても
「飛行少年」を読みながら
裏声で高く小さく
第九、を
歌おう

窓硝子に曇る追憶
ひとつひとつにゆっくりと
あいづちを打ちながら
もう
藍色の「僕」と
肩を並べて頬に
硝子越しの雪紅が頬染めて
パーティが
始まるまで待てなくて
待てなくて
プラスチックのジョイスティックが
リボン越しに指にふれれば
期待を包む銀の紙、がさりソックスの暖炉に
ゆれ

ゆれて

更け行く聖夜に
変わって行く世界の片隅で
少年の絹のふるえをそっと守るように
プラスチックのジョイスティックたちが
Pの電子音にZZのリズムとJ with Dのパーカッション
プラスチックのジョイスティックたちが
Pの電子音にZZのリズムとJ with Dのパーカッション

裏声で高く小さく
第九、を
歌おう

窓硝子に曇る追憶
ひとつひとつにゆっくりと
あいづちを打ちながら
もう
藍色の「僕」と
肩を並べて頬に
硝子越しの雪紅が頬染めても

ひとつ、ふたつ
ゆれ

ゆれて

更け行く聖夜に
変わって行く世界の片隅で
少年の絹のふるえをそっと守るように
プラスチックのジョイスティックたちが
Pの電子音にZZのリズムとJ with Dのパーカッション
プラスチックのジョイスティックたちが
Pの電子音にZZのリズムとJ with Dのパーカッション

それから
それから

裏声で高く小さく
第九、を
歌おう

クリスマスイブに
ジングルベルの耳鳴り
微熱の頬を窓硝子に預けたまま
裏声で高く小さく
第九、を
歌おう

プラスチックのジョイスティックたちが
Pの電子音にZZのリズムとJ with Dのパーカッション
プラスチックのジョイスティックたちが
Pの電子音にZZのリズムとJ with Dのパーカッション

それから
それから
それから

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1996/12/23 ver1.0
2003/12/24 ver2.0
「飛行少年、S」プラスチックの扉の前で


自由詩 『飛行少年、S、の聖夜 1996』 Copyright 川村 透 2003-12-24 00:56:07
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