大麦小麦の大火事は黄色いラジオペンチでした
m.qyi

大麦小麦の大火事は黄色いラジオペンチでした






訪れたCH地方の緑の丘陵は、M川が西から東へ流れるダーク
グリーンのライン、N3が東から西へ切り込む水色の線。
天地分離南風がふけば、全員で正確に17度傾く一面の麦畑で、
時刻は赤い夕日の9時12分。そういう時は、緑の麦畑の奥に
は、グラスホッパーがうようよしゃがんでいます。

あなたはそこに立っていたというか、佇んでいた。

さて、グラスホッパーの心を湛えているのは、濃縮の緑のペン
キの湖水です。小波ひとつ立ちません。グラスホッパーのまと
うタンガロンスーツは、コテイカンテンペンキ塗り立てのつや
やかさ。グラスホッパーの使命を与えているモーメントは、青
空への跳躍平均値です。グラスホッパーの大地を支えているム
ーブメントは、特殊鋼SWP−Cのスプリングのついた大腿で、
それから乖離するのは、昼間の太陽を吸い取った赤いインクで
はちきれそうな柔らかい腹です。

あなたはそこに立って、日没の時刻は9時12分でしたね、見
ていましたよね。車のトランクからわざわざツールケースをと
りだして、握るところが黄色いプラスチックでできたラジオペ
ンチを握っていました。訪れたのはCH地方でした。見渡す限
りの緑の麦畑で、日没の9時12分にはグラスホッパーがその
中に任意無数にいたんです、半透明プラスチックシートの羽を
震わせて飛び立とうと、グラスホッパーたちが一斉にヘルメッ
トをかぶりなおした時でしたよね。

ところで、グラスホッパーが緑の重いヘルメットをぬぐことも
ありますが、頭の中には二つの小さな黒いビーダマと時計のつ
いた黒い爆弾が置いてあります。

大麦小麦の大火事は黄色いラジオペンチでしたね











自由詩 大麦小麦の大火事は黄色いラジオペンチでした Copyright m.qyi 2005-08-21 12:47:45
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