ピエロ
みもる

炎天下の中
デパートの屋上で
僕はピエロになって働いている

何度も同じことを繰り返すだけの
つまらない芸でも子供たちは
大きな笑いと拍手をくれる

夕方になり人気が減ると
急に悲しくなってきて

一粒の涙がこぼれた

僕はいつまで
こんなことを
し続けなければならないのだろう

手からこぼれ落ちたボールが
ころころと誰もいない広場に転がる

そこには風に運ばれてきたように
君が立っていて

君の体の隙間からあふれだす
逆光に

僕の頬をつたう涙は
蒸発して雫模様のペイントに変わる

拾ってもらったボールを受け取ると
ボールは掌に沈んで丸い模様になって

「まだまだショーはこれからよね?」

その言葉に
地面から大きな丸い玉が湧き上がってきて
僕はそれに乗って浮かび上がる

辺りは夜になり
二人だけの空間に
パチパチと小さな拍手

君が手を叩くたび
僕の体には星の模様がひとつ増え

いつの間にか星の模様は無数になる
夜空と見分けがつかないくらいに

君が笑うたび
音符模様の紙吹雪が舞い

君が歓声を上げるたび
僕は誰よりも高く飛び

君が芸に見入るたび
僕の赤い模様は鮮明になる

もっともっと
躍らせてくれ

もっともっと
おだててくれ

もっともっと
笑ってくれ

僕はピエロ
お客がいないと芸ができない

僕はピエロ
小さなデパートの屋上で働く

僕はピエロ
君だけの


自由詩 ピエロ Copyright みもる 2005-08-20 22:37:30
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