狂い雨サンダーロード
恋月 ぴの

夏空が泣きはらす
夕立の前はやたら蒸し暑い。
渦を巻く熱気のせいで
僕は下着までびちょびちょだよ。

君は美少女の小窓。
今はエアコンの優しさが
君の胎内を潤しているから
とりあえず君の小窓は閉じたまま。

夕立雲はお天気姉さんの
何かの重さをはかるような
柔らかい仕草から湧き出して
僕の頭のまわりを包囲する。

ぽつりぽつり来たかと思ったら
あっという間に
お台場海浜公園で拾った蟹の甲羅みたいな
汐臭さを伴って土砂降りだよ。

小窓から君を覗くと
白いレースのワンピースから青い水玉模様が透けていて
「あら、お外は雨で大変ね」
だなんて、まるで他人事のよう。

土砂降りの雨粒は腐乱した蟹の涙。
ユニクロで買った折り畳み傘を突き破り
たちこめる汐臭さが
青い水玉模様となって跳ねかえっては
僕の踝あたりまで
お台場海浜公園の胡散臭さにずぶり!ずぶり!
と沈みこむ。
君に何かを握り潰されそうな
不確かな期待と不安が僕の脳髄を鷲掴みにして
僕は痙攣した瞼から悦びの涙を流しそうだよ。

青い水玉模様は腐乱した蟹の涙。
咽返るような雨上がりは、
ぬるり
君の小窓を穢したままで。


自由詩 狂い雨サンダーロード Copyright 恋月 ぴの 2005-08-14 21:47:10
notebook Home