*雨 恋し*
かおる

ふってくる 蝉の声に閉じ込められ
みどり色にとけていく
こんもりとした緑の隙間から
容赦ない光が照りつける
白と黒のかげの中 一陣の風
あおと蒼のあいだに 
ぽっかりと浮かぶ しろ
ひとしずくの 雨も恋しくおもう





               カンカンと照りつける陽射しと
               蝉時雨にみどり色の閉塞感
               この容赦ない光の洪水に 
               白旗を振るのが関の山
               ションボリとうつむく 
               花々に 流す涙も 枯れ果てる





   三角州の 突端に しろく光る びいどろの お城
   空中庭園から眺める あおい キャンバスは
   いろんないろを 見せながら 
   まさに 黒に 沈もうとしている
   足下には チカチカ 瞬き始めた イルミネーションに
   賑やかな 命の 鼓動を 聞く
   振り仰げば 星ひとつない そらに
   雷さえも 恋しく想う





          あんなに うるさかった 蝉の声が
          どんな指揮者が タクトを振っているのか
          ピタッと 静寂の彼方へ 落ちていく
          くもが かげを団体で引き連れて
          我が物顔で 闊歩しだすと
          雷神がいかずちの 
          ファンファーレを轟かせ
          ギザギザの輝きを 
          そらに残していった
          乙女の流す涙も あつく 激しい





乾ききった しらちゃけた 大地に

ぬくもりのベールが 静かに 静かに たちこめる

      シト シト ピチョン

金魚鉢のこちら側から 喜びの鼓動が

黒く くろく 塗り込めるのを

ジーと 見つめる ある夏の日の 出来事でした


大粒の 水滴が しゃぼんのように

      ぷくり ぷくり ぷくり

      ふわり ふわり ピシャン


金色に輝く 水玉に 

くらむぼんを みつけたよ


自由詩 *雨 恋し* Copyright かおる 2005-08-11 08:46:05
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