乾いた雨男
HARD

彼はいるのだ
明るさ―この時期には場違いな―の中に
まるで透明で小さな箱に押し込まれたように
彼は縮こまっているのだ

ただ、昨年、一昨年、と
思い出せるだけのこの時期の思い出を
暗く、じめじめとした、けれど彼にとっては最高の思い出を

毎年、毎年、彼は別の女を抱く
黒髪、長髪、しっとりと潤った肌
   雨女
イメージ的な雨女

しかし、今年は違った

彼は選択を誤ったのだ
この女は……
まぶしすぎて顔がわからない
まぶしすぎて何もわからない
   晴れ女
影すら見えぬ晴れ女

彼の追想は止まる事を知らない
間に乾いたため息
「!」
「ため息まで乾いている」
ガクッと俯く
彼は尚更小さく丸まる

今年は雨を降らせられない
彼は勿論性欲も湧かない


自由詩 乾いた雨男 Copyright HARD 2005-08-11 04:46:08
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