夏の底
なつ

もう少し近くで
聴かせてください
微熱の片すみに降りそそぐ
この音の連なりが 唄であるのなら

夏の底
透けた木の葉を揺らす
あるかなしかの風
古ぼけた木のベンチに
ゆっくりと
時間をかけて
腰をおろす

遠ざかる空
光りをこぼしてください
この空間を
光りで養ってください

渇ききった喉に
今朝
言い出せなかった挨拶が
一文字ずつ
絡まっては 
泣きたく なる

まぶたの残像を
かき消すように

耳たぶに落ちる旋律は
羽根の色をしている

やがて
夕陽にさらされて
唄の無い場所へと
帰るのだとしても

みあげた空の奥から
わたしの底辺へと
音階は
繰り返すから


光合成を終えた想いを
そっと置き去りに させてください


自由詩 夏の底 Copyright なつ 2005-08-10 22:03:42
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