ふうりん
しらいし いちみ 

バスルームに聞えて来たのは
ベランダのふうりんの音
さんど ちり〜ん ちろり〜ん ちり〜ん

急いでバスタオルに身を包んで
ふうりんを見に・・・
短冊は揺れてるけれど音は出ない
カーテンのしっぽが少し揺れて隠れてしまった

音が出ないふうりんを見上げて
座り込んでしまったら
程よい汗は少しづつ乾く

もう一度聞きたくて
カーテンの裾を柱に縛り付けてみた
カーテンは風をはらんで
思いっきり膨れ上がる
そばにある素焼きの植木鉢が転げそうになった
慌ててほどいて・・・

それでもふうりんは音を立てない
ふうりん越しに透けて見える空は青くて
白い雲が金魚のように泳いで綺麗だ

あれは・・・父さん?
今日は八月九日
長崎の熱い六十年前の今日だ







自由詩 ふうりん Copyright しらいし いちみ  2005-08-09 08:39:39
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