過ぎるものへ
木立 悟
またひとつ午後の行方が指し示され
風は不確かなまばたきをする
草の迷いと疑いのなかから
等しくねじれた枝が現われ
石のまぶたに呼びかける
空の一点から来る声に
地が応え季節がはじまり
木々の隙間の景色は濁り
窓は事実を映さなくなる
寒さの壁の内外で
音は音を失ってゆく
流れるものに付けられた
ひとつひとつの名が旅立ってゆく
いつか解かれる日の来る謎が
いつか失くなるもののなかで微笑んでいる
変わりつづけるもののなかで
変わりつづけながら変わることなく
ただ無作為の冷たい翼に抱かれて