だいだい色の童話集
佐々宝砂

雨がしとど降る夕方にさえ
その図書館は
虹のなないろよりも多くの色彩にあふれているのでした

花はバラ色
空は空色
木々は緑

図書館に住む少女たちは
童話の勇気ある少女のように
うたいながら
やらなきゃならないことを片づけてゆくのでした

山は草色
海は水色
夕焼けは金

わたしはわたしで
ねずみ色した椅子にすわって
まだ語られない生糸を
せっせとあつめて染めあげて
織物につむいでゆくのでした

わたしはまだおぼえていたのでした
わたしがやらなきゃならないことを

だいだい色の童話集に
書いてあるはずのこと
でもその本は
この世の図書館にないのでした





(初出 蘭の会2005.7月月例詩集「橙」)


自由詩 だいだい色の童話集 Copyright 佐々宝砂 2005-07-31 02:58:31
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