犬にも夏
鳴々門 零

真っ黒い犬が
みごとにすり寄って来た感じで
大きな尾を嬉しさのあまり
振り乱しながら
何処が目だかわからない
心の奥まで伝わってくる愛くるしさで
きれいなベロを垂らして
生ぬるいあいさつをしてくれている

夏の日差しにゆらめく
古い赤レンガの倉庫には
色どりが派手に鮮やかな
擦り切れる前のマッチ棒が
勢いづいたパッケージを飛び出して
燃えあがらないようにシズルを垂らしていた

整った石畳を伏し目がちの犬が
腹を擦り付けそうなくらいに暑さに参ってしまって
その仕草に声かけて
かわいいね あついねえ
どの言葉にも引き摺られず
もくもくと暑さにかまけている


自由詩 犬にも夏 Copyright 鳴々門 零 2005-07-30 20:21:57
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