本能
みもる

動物が獲物を狙うときというのは
獲物が獲物を捕らえた瞬間なんだって
そこが一番隙が生まれるらしい


コンタクトを必死に探していて
やっと見つけた!と立ち上がろうとしたら

机の端に頭をぶつける
もがき苦しんだあと

コンタクトは自分の足の下で
粉々になっていた

気になっていた女の子が
風邪をひいて休んでいて

悪友がお見舞いにいけと急かす
弱っている時が
しとめるチャンスなのだとかどうとか

意を決していってみると
すでに悪友がお見舞いに来たあとだったりする

初めてまともにこなせたと思った仕事は
よくわからない社会のしくみに流されて

気がつくと上司の手柄になっている

上司は説得力のないたとえ話を持ち出して
ラーメン一杯ですべてを丸めてしまう


僕は気がつくと
何も狙ってもいないのに
隙だらけだ

いつも狙われて
奪われてばかりだけど

たぶんそれは
僕が本当に必要だと思っていないから

野生の闘争本能は
何の進化と引き換えに影を潜めたのか

くだらないことは
くだらない奴等に全部くれてやろう

でも本物だけには
短い牙を忍ばせて
だらだら垂れるよだれをすすり上げて

そして尻尾をふって隙をみて
そのまあるいおけつに
かぶりついてやる

上司のくっさいおけつも
女の子のぷりんぷりんのおけつも
地平線に見える大きな山のおけつも

僕の野生の本能を
剥き出しにして


自由詩 本能 Copyright みもる 2005-07-28 05:21:17
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