どうしてここには生きてるものしかいないのってこと
ピッピ

八月
がくる。別れの季節
を知らないままに。
二度と醒めない夢
を夢見ながら、二度と終わらないおはなし
のまんなかにいる。
失われたひと
によってうたわれた歌
を、誰
にも知られないようにうたう。

狂ったように暑い。ひと
が遠吠えを繰り返し、無数の谺
を噛み千切る。血流
のように横断歩道
を踏み潰し、青信号
は沈黙を破れない。それ
をずっと遠くでながめながら、わたし
は花の模様
になる。

孤独
はゆっくりとほんとうを変形させる。

まちがったこと
を言いそうになって、それから八月
が訪れる。
どこかできちんと壊れてほしい、と思いながら、醒めない夢
はつづかない。
どうしてここ
には生きてるもの
しかいないの。
忘れてみようとして、ひとり
はふたり
になって、ふたり
はいくつか
になる。
うそつき同士
がほんとうのこと
を言い合ってどうにか保たれていく。

さようなら。
生きているものたち
にさようならをして生きていく。
そうして世界
は腫瘍
のように孤独
だ。
誰も知らない場所
で、それは傷つけられ、失われ、もう二度と戻ってこない。


自由詩 どうしてここには生きてるものしかいないのってこと Copyright ピッピ 2005-07-22 20:43:15
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