窓ふく人
折釘

空がきれいに映った窓の拭き手
命綱に繋ぐ彼が空を拭く手
見上げるのはあんまり小さい
 動かす腕の振り幅

すべての空を拭き終えるには
ビルさえ朽ち残らない

 しずくひとつ零しても
 地面に辿り着くまでに
 蒸発してしまうから
 指に恐くありませんか


夕日がゆっくりつぶ落ちるを拭き取る窓に
はっと息ふきかけ彼が拭き取る窓に
見つめるあんまり小さい
 まばたく瞳の深さ

すべての光を浄め終えるには
街さえ倒れ残らない

 明かりひとつ灯しても
 くうきを進む合間にも
 散り飛んでしまうから
 胸に冷たくありませんか


彼は反射するほどゆがむ世界を拭いて
彼は鴉が疲れて帰り舞う路を拭いて
急な風に傾いた
 すべての命を抱き終えるには

あんまり小さな足場も宙に
消滅してしまうもの
あなたの篭の揺れが
記憶の中で残像です




自由詩 窓ふく人 Copyright 折釘 2003-12-13 17:03:22
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