言祝ぎのうた (大村浩一氏、鈴木素子氏の結婚に寄せて)
白糸雅樹

走る男がいた
ノートパソコンやら書類の束やら義理やら思いつきを書きこんだ手帳やら約束やら書かなくてはならない手紙やら本の題名やら領収書やらを山のようにかかえて走る男がいた
ばらばら落とした手紙を拾いに駆け戻り、かき集めては走る男がいた
 
走る女がいた
北の山からアジアの平原から南の島からどこまでも走る女がいた
 
走る男がいた
仲間に囲まれ、時に先になり後になりして走ったが、隣を走るものはいなかった
 
走る女がいた
仲間に囲まれ、時に先になり後になりして走ったが、隣を走るものはいなかった
 
A boy meets a girl.
ではなくて、
A man meets a woman.
A woman meets a man.
 
走る二人がいる
光溢れる海を、山を、眠らない街を、眠る家々の間を、走る二人がいる
やがて彼らは子を背負い、三人になり四人になりどこまでも駆けてゆくだろう
やがて子は巣立ち、また二人に戻っても走ることはやめない二人がいる
小さな言葉をあちこちに書きつけ、彼らは走りつづける
川の一滴となり、寓話のなかのものとなり、それでも
彼らは走りつづける
彼らは走りつづける
 
            2005.05.26
(大村浩一氏、鈴木素子氏の結婚に寄せて)

            2005/08/19改稿


自由詩 言祝ぎのうた (大村浩一氏、鈴木素子氏の結婚に寄せて) Copyright 白糸雅樹 2005-07-17 21:39:35
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